ウィーク・トライブ

BACK | NEXT | TOP
・・・・悲しい事だな。運命なんて物は容易く消えてしまう。
そんな物、元から無いほうが良いんじゃないか。
もしも、・・・もしも神が創ったとしたら、
神を憎むべきなのか・・・・いや、違う。
・・・・・そうやって逃げて来たんだ。

憎むべきなのは・・・・

人だ。





第二十三章「紅」





ゆっくり。ゆっくりと慎重に歩を進ませながら、当ても無く声の鳴り響いた場所に向かって行った。
「・・・・・・シルフ。考えても仕方ねぇーよ」
少し俯きながら歩いていたシルフに、ゼロは慰めるように言う。
ゼロにしても、怒りは完全には消えてはいないようだが。
「うん・・・・。でもちょっと・・・気になって」
やはりまだ、「疑問」が収まり切らない様に浮かんでくるらしい。
病院の中にいた患者や医者も、巻き添えになったと言う怒りも。
ルバスは、そう言えば。と、一つの質問を言い掛けた。
『何で地下に医者と患者が?』と言う事だ。
だが、出来るだけ思い出させたくはない。と言う理由で質問を打ち切り、また、タイミングを見て質問をする様にと考えた。
「あ、セィ、あのギル達はどした?」
ゆっくりと列の最後尾で辺りを見回していたセィが、レイドの問いに深緑の目を向けた。
「今は・・・・・・まぁ、森を調べてもらってる。あまり君達は気にしなくて良い。個人的な事だ」
隠してるのか。ただ単に説明が面倒なのか。 
良く分からないが、セィは良く人目に付かない所で色々と何かをしている。
追求しようか。止めようかと考えていた次の瞬間、だ。

『ぐァァァァ!!!うガゥゥァァァァァァァ!!!!!!』

「うわっ!?」
また鳴り響いた声に、先頭にいたレイドが仰け反る。
声からして、人である事は分かった。
しかし、木が数本なぎ倒される音が直後に聞こえた。
「おいおーい・・・・・・危険じゃねぇのか・・・・・・・?」
涙目でガックリと項垂れながらスザクは溜息をつく。
元々、行く事を断っていたのだが、無理矢理説得されて連れて行かれたのだ。
「だったら一人で残ってろっつーの。一人でグノーシスに狙われてろ」
レイドの人情の欠片も無い言葉に、追い討ちを掛けられる。
その時また現れる大声にレイドは驚いた。
「ほれ・・・・・見ろ。自分だって怖いんじゃねーか」
何でもない様な表情ながらも、心底グッサリと隙を疲れ精神的ダメージを受けていた。
背を向け、余裕な感じを振舞いながら反論する。
「大丈夫だって。もしも現れたとしても簡単に・・・・」
言い掛けた丁度その時。だ。突如目の前の茂みから何者かが現れ、先程までの呻き声にも値する絶叫をした。
が、ゼロだけは全く動揺せずに剣を構える。戦い抜いた熟練者。とでも言うのか。
だが攻撃はまだしていない。敵かどうかもまだ判断は出来ていないからだ。
紅い目。紅い皮膚。そして、・・・・・・・・・・・メキメキと唸る翼。
重症の様子で血を流し、息を切らしながらこちらを鋭く睨んでいる。

「カービィ・・・・・!?」

最近はカービィ族と良く会う。何故こんなにも生き残っているのか。と言う思いと、何故、羽があるんだろう。と言う驚きが頭を交差する。
そして翼のあるカービィ族は、蒼と紅の二つの剣を握り構えた。
「・・・お前等・・・・・・誰だ。・・・・・「奴等」・・・か?」
「奴ら」って何だ?と言う、当たり前の質問をしようとしたが、こちらの言葉を聞き入れる様子も無く続けた。
「やめろ・・・・・あんな研究は・・・お前らは・・・・・何を望んでいるんだ!!!」
翼を唸らせながら、空高く舞い上がった。流血している血が空から降る。
何とかギリギリ空を飛べたらしく、不安定に空中を漂い、苦しさに耐えているのはすぐに分かった。
二つの剣を交差させ、地上に居るレイド達を見下ろす。
「お前らは・・・・・・生きてちゃ困るんだ・・・・・・!!」
憎しみを込められている様な声を放ちながら急降下した。
交差させた剣を、双方共開きながら威勢よく構えていたゼロに攻撃する。
武器同士が『ガキィン!』と、大きな音が響かせた。

「・・・・・・・・・?」

ゼロは次の攻撃へと構えていたが、攻撃が止み、翼の生えたカービィ族は凍りついたように硬直していた。
そして、音も無く倒れた。


「骨折・・・・・切り傷・・・・火傷・・・・・打撲・・・・何でこんな複数の怪我が・・・・」
シルフは医者だ。一目見ただけでも、この程度なら分かるのだろう。
何よりも、言っている通りに複数のこの怪我にレイドは驚いていた。
「・・・・・・・・・拷問でも受けたりしたのか?」
あまり言うのも気持ち良くは無いが、偶然様々な種類の怪我を連続で受けると言うのはほぼ有り得ない。
この答え以外には想像できなかった。
「そーいや・・・・・・スザク。お前俺達に付き合わなくても良いぞ?」
くるりと後ろを向くと丁度欠伸をしているスザクが立っていた。
レイドの言葉に、「お前らが無理矢理連れて来たんだろが」と即答する。
「・・・・ってか、いーんだよ。俺にもちょいと目的があるし、ケルマの村でじっとするよりいい」
『ケルマ』と言う言葉を聞き、記憶の中から呼び戻された。
今あの村はどうしているのだろう。と言う事を想像していた。
その時茂みからルバスが現れる。
特に出来ることは無かった為、つい今まで辺りを見回していた。
「特に誰もいなかったけど・・・・・何か奥に変な建物があった。怪しい工場、って感じ」
「工場・・・・・・?」
こんな森の中に工場。森の中に病院がある事は置いといて、何故態々わざわざこんな場所に在るのか。
『後で行くかどうか』と言う選択肢に困りながらも、とりあえずこのカービィ族を見た。
シルフに手当てをされ血の流れは止まっているものの、
激しく動けばすぐに血が吹き出そうで見るだけでも痛々しかった。
そしてこの『翼』。色はやや黒い。
カービィ族には翼など生えるはずが無いのだが、・・・在る。何故か。最初に見たときは一瞬自分の目を疑ったが、何度見てもある物はあった。

・・・この前病院の寝室から見たのは・・・このカービィ族だろう。

「・・・・レイド」
その声はセィだった。
直接名前を呼ばれた事は無かった為、慣れない状況に少し戸惑う。
素振りをしているゼロを他所に、
セィは翼のあるカービィ族に視線を送りながらこう言った。
「こいつ・・・・・・・カービィ族か!?」
その時レイドに代わってゼロがツッコミ・・・・いや、殺人未遂に値する事をしたとか。

「・・・・!!」

カービィ族の紅目が開かれた。その瞬間、一瞬にしてその場を飛び退いた。
巻いた包帯を止めようとテープを貼り掛けていたシルフは、急な出来事に小さく驚きの声を上げる。
やれやれと溜息をスザクがしている時に、カービィ族は硬い表情で居た。

「ぐッ・・・・・何の真似・・・・・だ」

苦しそうな状態は変わらぬまま、この族にしか味わえない孤独を帯びた目で睨む。
スザクは全く変わらない表情で言う。
「おいおい・・・・助けて貰ってそりゃ「黙れ!」
掻き消すように叫ぶ。その時、こちらにカービィ族が二人居ることに気づいたが、一瞬動揺するだけですぐさま興味が無いように思想を戻した。
「お前等・・・・・追っ手とは別の奴等か・・・!?なら何者だ・・・・・・・・・グノーシスなら・・・・・殺す」
再度剣を構えた。少し血に塗れた様な痕が光に当たり、不気味に輝く。
ゼロも同じく戦いに備え構えたが、
他の者は「グノーシス」と言う言葉に反応し、すぐに質問した。
「グノーシス・・・・・・?何か知ってるのか?」
逆に質問されるとは予想外だったらしい。
一瞬戸惑った後、武器は構えたままで話し始めた。
「・・・そんな物答える義理は無い。まずこちらが最初に質問をしたはずだ」
断じて自分から話す気は無いらしい。諦めて答える事にした。
「・・・・・グノーシス何かじゃない。ってか、グノーシスが何なのか知りたいワケだ。こっちは」
グノーシスじゃない。と聞くと、安心したのか、疑問に思っているのか分からないが、武器をゆっくりと下ろした。睨む目も少しばかり緩くなる。
「なら・・・何故ここにいる。貴様らは自ら合成させられようとでも?」
合成やら翼はあるやら質問してもしきれない様に、次々と発せられる言葉によって頭が混乱するばかりだった。
ただでさえ数々の疑問を抱えてると言うのに。
「・・・・何も知らないのか。グノーシスなどと言う連中はあの中にいる。俺はいまからそこに向かう。お前らがどうしようが勝手だ。好きにしろ。・・・・・ありがとな傷直してくれて」
言い切った直後に、まだ多少流血している翼を広げた。
ゼロ以外、頭の中を整理しようとしていた時だったため、呼び止めようとした時には既に上空。そして、振り向きもせず姿を消した。
過ぎ去った事に対して、質問。と言う質問が多すぎた。
言ったところで解決するわけも無く、奇妙な居がたい空気が漂う。
しかし、想定なら出来るだろう。と思い、スザクは言った。
「・・・・合成って・・・・あの工場一体何やってんだ?」
その時、シルフが何か思い出した様な素振りを見せた。
「・・・そういえば、此処の病院と近いからあそこに工場があるのは前から知ってた。でも気味が悪いから行かなかったし・・・特に被害も無かったから」
「へぇ・・・・あ、でも、合成されに来たのか?ってのは何だろ・・・・・」
しかし、予想も何も・・・・・特に思いつかない。
「グノーシスが関わってるなら・・・・・俺とルバスは行くけどな。お前らどうする?無理に来なくてもいいぞ」
行くあてもねぇし。目的がある。付き合ってやるさ。・・・・・手がかり探すんだから何もしなければ始まらない。
そんな言葉がほぼ「即答」の様に言い渡された。
特に何を狙っている等の事は聞いていないが、別に話すこともない。
言いたくない理由ってのもあるはずだ。

「んじゃ、行くか」


時間は・・・・・正午辺りだろう。
カービィ族の体に、ザルス族のような翼を持ち、照りつける太陽を避けるように、森の葉に隠れながら器用にも森の木を回避しながら飛んでいる。
温度は少しばかり高いらしく、じめじめと憎ったらしい空気を裂いていた。
態々わざわざ上空ではなく地上ギリギリで飛ぶのは、先程言っていた「敵」から姿を暗ます為なのだろうか。
今にも飛ぶことが出来なくなりそうな状態で、長い時間を飛び続けていた。

「着いた・・・・か」

長い時間といっても、数分だった。
しかし、この体にとっては数時間飛んでいたような体力を消耗するだろう。
翼を丁寧に折りたためると、紅い目をその工場らしき場所に向けた。
一見何の変哲もない工場。森の中にあると言うのは可笑しな事だが、外見は至って普通だ。
アスファルトが周りを柵のように囲ってあり、工場自体には扉と、煙突から出る煙が在るだけだ。
シルフの病院を一回り大きい。と言う程度だ。工場にしては小さい。地下でもあるのだろうか。
「一人でも・・・・多く。待ってちゃられねぇ・・・」
ゆっくりと歩を進ませる。一歩、一歩。今にも倒れそうだ。
そして、強い信念に導かれるように扉の前に立った。一体何をしようとしているのか。
「此処だけでも・・・・・・潰してやる・・・・・・・・!!」
扉を一瞬にして切り裂いた。木っ端微塵に割れた扉は音を立て崩れ落ちる。
その時、中にいた白衣を着たベルラス族がカービィ族に気付く。
驚きが収まらないままに、何をすれば良いのか戸惑っていた。
そして躊躇い無くそのベルラスを引き裂いた。
その瞬間警報機が鳴り響く。監視カメラでもあったのだろうか。
耳を劈くような音が辺りを包む。
入り口から入って最初の部屋は、たいした大きさでは無いものの小さな家が入りそうな大きさだった。
とは言え、天井は少し低め。照明が所々にあるだけで、さほど明るくは無い。むしろ暗かった。
そして、右上、左上と左右対称にある扉の近くで、何人かが現れた。
一人が資料の様な紙を互いに見せ合うと、確信したようにカービィ族を指差した。
「・・・・・・102.・・・・人相なども同じだ」
皆、目が狂っている様だった。人でないと言うか、機械のようだと言うか。
人を見下す。・・・それとも違う。ただ・・・・・狂ってる。
「二度脱走・・・・そして帰ってくる?意味が分からないな。逃げるなら逃げるで、とっとと姿を暗ませれば・・・・」
研究員の様な人物達の一人が急に血を吐いた。
この状況が予想外とばかりに動揺していた。・・・・・腹に剣が貫通している。

「・・・・・・そんな御託には興味が無い」

剣を腹から抜くと、そのまま地面に崩れ落ちた。
それを見た者達は、あたかも計算済みだった様子・・・だと思えたが、それとは正反対。
「力を抑える薬は飲ませたはずだ・・・・それにあの怪我で・・・」
次の瞬間、その人物も肩から下に剣を振り下ろされた。
「お前ら・・・・・あいつらを解放しろ!今すぐにだ!・・・・でなきゃ殺す」
しかし、カービィ族の前の立ち尽くしていた人物達は、次第に落ち着きを取り戻していた。
それ所か、呆れた様な視線を送っている。
「・・・・捕らえろ」
その声を耳にした瞬間、カービィ族は翼を使い、空中に舞う。
自分の体の約四倍程しかない天井に激突する直前の場所で、器用に停止する。
読みは当たっていたらしく、カービィ族がいた場所では、此処の者達が空気を切っていた。
そのまま落下と共に敵を束ねて切り裂いた。

「何だ?一人で強盗でも?犯罪じゃないか。直ちにやめなさい」

何処からともなく聞こえたこの声は、白衣を着た者達を通り越し、左上の通路からだった。
ゆっくりと姿を現すと、他の者達全員よりも少し高い身長。手袋をしていて直視は出来ないが、何故か手が扇子のような形だ。
履いている靴も同じく横に広い。
そして、皆と同じ白衣を着ていて、何かを「証明」する為の様なバッジ。
蒼い髪、狂眼。

「K.N 『ネクロ』。君も・・・・・あの様になるかい?」
BACK | NEXT | TOP

-Powered by HTML DWARF-