ウィーク・トライブ

悲劇は何時も隣に

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ああ、・・・・知ってる。
諦めたら終わりだよな。それぐらいは分かる。
ただ・・・怖い。
他の運命が消え去るのは。

・・・・・だから、俺は昔に決めたんだ。あの事を。

実際は・・・難しいけどな。





第二十二章 「悲劇は何時も隣に」





「使うのか・・・・・・?それ・・・・・・」
心配そうに見つめる二人に疑問を持ちながら、
一人は光の篭った球を誰かにかざした。
「セィとか言う人が言っていた通り・・・・・・・・傷が治癒し始めてる」

あの日から二日が経った。
カービィ族の独特な細胞を継いでいる二人は、既に傷は完治していた。
ベルラス族のゼロも完全に傷は治っている。
三人とも不思議だった。時間が経つ毎に傷が治るのが感じられる程だったからだ。
そして、残るスザクは、「例の球」によって傷が直された。
グラヴィズが、以前にレイドとルバスから受けた傷を癒した物だ。
しかし、これには人の生命が篭っているらしい。
人の命を奪い、その分回復する。と言う物ではないのか。
その「例の球」は謎の集団がこの病院を襲い、最後に現れたギル族の「ザイン」と言う人物が落としていったらしい。
落としたのか。渡したのか。よく分からないが、レイドが傷を治せると言う事を言うと、副院長のシルフはすぐさま使用した。
スザクの傷を早く治してやりたいと言う気持ちがあったからか、人の命が使われている。と言って、シルフがこれを使わない状況にもさせたくない為、その事は言わない事にしている。
しかしながらも、多少の抵抗は感じた。
スザクの傷は、レイドよりも浅かったからか、例の球一つで傷は完全に治ったらしい。
これで、一段落、とでも言うのだろう。

カーテンがふわりと揺れる寝室。
そこに人の影は無く、レイドが寝ていたベッドの上には誰も乗っては居なかった。
薄い水色の入り混じったカーテンは、音を立て漂う風に身を委ねながらも、部屋に差し込む太陽の光を遮っている。このもの静かな部屋にいた赤い姿をした二人は、一つの場所に向かっていた。
「…この後どうするかな」
ルバスが小声で呟く。今、まだ姿さえ見ていない院長に礼を言いに向っている所だった。
その時点で、今後何をすれば良いのかを考えている。
「この後も何も・・・・第一にアンタ達今まで何してたの?ギルが大勢来た時は驚いたけど・・・・二人の傷も凄かった」
この声は、副院長のシルフだ。
この病院に案内など必要ないが、「付き添い」と言ってレイド、ルバスと共に院長に会いに行っていた。
「人探し、かな」
レイドは即答する。何処か、遠くを見る様な目でをしていた。
その表情と声で、シルフは何か深い理由があるのだろう。と判断したのか、追及はしなかった。
会話をしている間に、シルフは一つの部屋に視線を移す。
今見えるのは、回す事によって開閉出来る銀色の丸いドアノブに、縦横の幅が小さい黒色の扉。
シルフは取っ手を掴み、ゆっくりと扉を開けた。
・・・・中には誰も居ない。
二人は院長がこの部屋に居ると思っていた為、多少動揺していた。
部屋の大きさも大した事は無いと言う事は、ドアの大きさから察し出来たものの、やはり不自然だ。と言う読みだけは当たっていたらしい。
部屋の中は毎日手入れしているらしく、埃を見つけるのさえも難しい程だ。
そして、一つの写真が置いたあっただけだった。
「・・・院長って・・・・・これ?」
その写真は、にっこりと微笑む男性だった。白衣を着て、病院をバックに手を振っている。
「さっき話したでしょ。・・・・ここの院長。私の命の恩人。この人が生きていた時に副院長にされて・・・。自分は院長とは語れない」
そして、カービィ族の二人を前に押し出す。
礼は、写真に言って。と言う事が、言われなくても分かった。
「ありがとう・・・ございます」
心の中で呟いた直後、口に出して言う。
気づけば、シルフは両手を合わせ拝んでいた。
その時、ルバスは気づいたが、あえて言わずにいた。
シルフの瞳から涙が零れ落ちるのを。
レイドは既に背を向け、この部屋を跡にしかけている。
しかしルバスは一瞬だけ、両手を合わせていた。
「・・・・・・・・泣いたって良い事ねぇぞ。それぐらいなら笑え」
レイドから発せられたこの言葉に、ルバスは驚く。
既に気づいていたのか。と言う思いと、そんなに唐突に言うな。と言う事だ。
しかし、レイドが泣いた所は、あの日を境に見たことが無い。
そういえば、自分も。だ。
「泣かれるのを院長とやらは希望したのか?笑ったら喜ぶだろーよ」
シルフは、一瞬黙ると、隠さずに涙をぬぐい、言った。
「・・・・・そうね」
にっこり微笑む。二人には、先程の写真の笑みと重なったように見えた。
三人はその写真が置いてあった部屋を後にする。その時、レイドは一つの事を思い出した。
「そういえば・・・グラヴィズに捕まっ・・・いや、何でもない。ここにぐったりしたギルも来たはずだが、今どうしてるんだ?」
捕まってる。と言い掛けたことに疑問を持ちながらも、質問されたことを素直に返答する。
「・・・・ギル達は、ただ餓死寸前の状態だっただけだから、食料を与えて、少し安静にさせただけですぐに良くなった」
二人が少し安心したような顔を見ると、ゆっくりと体の向きを変え歩き出す。
「そういえば、ゼロがアンタ達と共に行く、とか言ってたけど・・・・・」

「は?」

「付いて来るって・・・・何でだよ・・・」
冷静に対処しようとしているが、スザクは心底動揺していた。
どうしても行くというゼロを宥める様にも言っている。
「うるせぇ。言ったろ?協力してやるって。俺にだって目的もある。悪い事は言わねぇ。連れてけ」
ほぼ無理矢理、仲間に入れろ。と一方的にゼロは言っていた。
散歩に出ようと外に向かった所をゼロに引き止められた為、場所は廊下だ。
その時、会話をしている二人の後ろから、レイド、ルバス、シルフが姿を現した。
スザクは疲れ切った様な顔で三人に言った。
「・・・おう。何か『仲間に入れやがれー』とか言ってるんだが、どうすりゃ良いんだ?」
レイドは少しどうしようか。などと考えた後に、間を置いて返す。
「・・・・・別に構わないけどさー・・・・お前の方はどうなんだ?この病院盗賊に襲われてるらしいし・・・・」
ゼロの返答が聞こえると思っていた時、横からシルフの答えが出てきた。
「大丈夫。他にも盗賊を追い払う人達はいる。それにゼロにはたくさん助けられたし、前々から目的があるとか言ってたし・・・・ここで番人やってくれたのも勝手にしてくれたんだから、態々わざわざ引き止める理由も無い」
少し心配そうに思ったが、ゼロは自分達について行きたがっていた。
「わ・・・分かった。来てもいい」
ゼロは勝手に喜び、んじゃ、今後よろしく〜。と、笑って言った。
やれやれと心底で呟いた後、出口から外に出る。

「じゃあな。シルフ。またそのうち戻るかもしんねーがな」
軽く笑うと、シルフも少し笑う。そして忠告。かの様に言った。
「あ・・・・・そういえば、ゼロの刀には触らないように。触れると怒ってどうにもならなくなるから」
やや呆れ顔で言った言葉は、レイド達の頭の中で嫌に響いた。
とりあえずは用心しておくことにする。と揃って考える一同。
「あ・・・・セィは?」
随分前から、姿を現しては消えるの繰り返しだった。
そしてあの「ザイン」と言う人物が誰かも聞いていない。
「・・・・・私なら・・此処にいる」
病院の出入り口の前方にある森の中から、セィは姿を現した。
残りの二十数名のギルはいない。
「今まで何してたんだ?」
「奴を・・・ザインを探してた。何処にも居なかったが・・・・近くに居るはず」
レイドの唐突な質問を、率直に返す。
そして、ザインと言う人物がいる。と言う言葉に、何の人物か聞くのを後回しにした。

「・・・・・・・・・!!」

セィは急に病院の後ろ側に駆け出した、一瞬驚きながら、すぐに後を追う。
何なんだ。と言う間も無く、全速力で駆け出すセィに息を切らしながら付いて行った。
そして又急に、止まった。丁度病院の後ろ側だ。
勢いでスザクだけ転ぶ。

「・・・・・・・ザイン・・・・!!」

セィの目には、ザインと言うギル族が映っていた。
手を病院に当てながら、こちらに気づき睨む。
手元は、何かを吸収する様な音が聞こえる。
「セィ・・・・・また貴様か」
全く焦る様子も無く、問題外。かの様に見下していた。カービィ族の二人は、あの目が他族を見下すグラヴィズと似ていた為、意味も無く怒りが込み上げてくる。
「その服からして・・・・此処の病院の者だな?」
その目はセィを通り越しシルフに当てられていた。
その時も尚、手は病院に当てられている。
「貴様こそ知らんだろうが・・・・・これはとある特別な物で立てられた病院だ」
「・・・・・・?」
シルフには意味が分からなかった。
特別な物とは何?と聞く間も無くザインは続ける。
「今、この病院を『保つための物質』を吸い取っている。全て吸い取りきったら・・・・どうなるか分かるか?」
「・・・・まさか・・・」
シルフが言い切る前に、ゼロが止めようと飛び出していた。
二本の剣はザインに振り下ろされたが、全く動いてないにもかかわらず剣は止まった。
「結界・・・・・・・・・!?」
そして、ザインの手から光が消えた。
その瞬間、病院に亀裂が入る。

「離れろ!!」

セィがそう叫び、レイド、ルバス、スザクが飛び退いた。
シルクは全く動こうとはしなかった為、ゼロが無理矢理シルクを引っ張る。
病院の亀裂から、一塊の壁が崩れ落ちる。
落ちた破片は地面に激突し、粉々に砕け散った。
それを合図にしたかの様に次々と壁が壊れていく。
・・・最後には瓦礫の山となった。
ザインは結界の様な物で守られている。
しかし、衝撃の多さか、結界は丁度崩壊が止むと共に割れた。

「そん・・・・な・・・」

崩れた病院を呆然としながら見る。
「・・・・・・・・地下にまだ重症を負った患者と医師が数名居るはずだ・・・・・」
ゼロの呟きにハッとする。シルクは、悲しみから怒りへと切り替わった。
次の瞬間、結界の切れたザインに向かい、シルクが常備のメスで切り掛かった。

だが、消えた。

皆が視線をザインに向けていたはずなのだが、
消える瞬間を捉える事さえ出来なかった。
呆然とし立ち尽くす。レイド達には掛ける言葉さえ見つからなかった。
今の状況では・・・「悲しむなら笑え」何て言えない。
・・・・いや・・・・・違う。
「悲しむなら笑え。何度も言わせんな」
シルフは驚いてこちらを振り向いた。

本当に大切だった。
あの人が持っていた病院は破壊された。
奴が何を狙っているのか分からない。
理由が知りたい。
この病院が何なのか。
そして何故これを狙われたのか。
あの人が守っていたのか。

「自分のすべき事をでも考えたら・・・・いいんじゃねーの?」

自分すべき事・・・か
理由が知りたい。
・・・取り戻したい。
・・・それに一番近い方法があるとしたら・・・・・

「・・・一緒に行ってもいい?」

「・・・・・!?」
この反応は予想外だった。
そして理由を考える間も無くシルフは続ける。
「・・・・・・帰る当てなど無い。あと、もしかしたら貴方達を助けたんじゃなくて、一度病院を守られたのかもしれない。
それに、一番の理由は・・・・理由が知りたいの」

疑問点など、幾らでもあった。
自分達に守られたのかもしれないと言ったが、こちらが助けられた上に迷惑かけた確立のほうが断然高い。
そうなれば、シルフが自分で望んでるなら答えは一つ。
「・・・・・分かった!」
元気良く言うと、あまり暗い話に発展させないために話題を切り替えた。
セィの近くには騒ぎを駆けつけた、ザインを探索中だったギル族が集まっている。
「あー…そういやセィって何者なんだ?ザインって奴も気になるし」
レイドは一人のギルに問いた。ルバスも近くで聞いている。
だが、名前が「ピット」だと言うことは知っていた。
二日前にザインと戦った時などで、セィが「ピット」と名前を呼んでいたのを覚えている。
本来なら明るい笑顔を見せてくれそうな純粋な少年だったが、今の話題になると暗くなった。
暗い話にさせない為話を切り替えたのだが、仕方ない。
「セィさんは僕等を助けてくれた恩人です。掟に耐えられなくなった僕達を救ってくれたんですよ」
レイドは、ギルに掟がある事を聞いた事があった。
内容を聞いてもあまり気持ち良くは無く、とにかく上下関係が凄まじい。
食料なども地位の高い者達に配られ、地位の低い者は大半が餓死すると言う。
そして、暗い表情を保ったままピットは続けた。
「ザインは・・・ギルの頂点に立つ人物で、掟の作成した家系でもあります。・・・この理不尽な掟は、全てザイン達が原因なんですよ・・・」
その声には憎しみが込められていたのが分かる。
そして、レイドは次第に声が暗くなると創造していたが、
次に発せられた声のトーンは高くなっていた。
「セィさんはそんな無茶苦茶な掟を変えて、自分が長になり、一族を統一しようと言う夢を持ってます。そうなれば・・・・こんなルールも変わってくれる。セィさんは恩人であり、尊敬する方でもあります」
セィは思っていたよりも立派な事を考えているのか。と、自分でも想っていた事と同じ事を考えた。
だが、横目には木の枝を折って何かしているセィに対して、疑問だけが浮かぶばかりだ。

「やっぱりだ・・・・・・・・」

今度は何だ。と、呆れるのか驚くのか感心するのか、
読めない追伸を待った。とりあえず「何が?」と聞く。
「この辺りの木は全て・・・・・奴に養分を吸い取られている。もしかしたら、此処を襲った大勢の集団はこの養分と引き換えにザインに生み出されたのかもしれん・・・・な」
確信とまでは行かない様だったが、自身はある様だった。
とりあえず、理解出来るようだが・・・・・今一判らないと言う妙な空気が包む。
「昔・・・・・・いや、自分がギルの掟を破らずにいた時だ。
ザインが自分達の住処に現れ、・・・・・奇妙な生命体を使ってその地から出された」
おかしな生命体。とは、此処を襲った集団と同じなのだろうか。
そういえば、スザクとゼロは「人じゃない」と言う確信を持っていた。
「奇妙な生命体」と言うのなら、人ではないのだろう。


『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』


あまりにも急に絶叫が響き渡る。
声の音が消えた時には、先程以上に静まり返った。

「・・・・・・・・行ってみるか?」

ルバスが小声で言う。何を急に。と皆言いたげだったが、今現在、何も情報は無い。
もしかしたら、誰かの目的へと繋がる道なのかも知れない。
「・・・・・・分かった」
ゆっくりと、期待する者、上等な者(ゼロ談)、怖がる者、気の進まない者。
その先には、苦しむ者がいる事も知らずに。
皆は崩れ去った病院を後にした。
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