ウィーク・トライブ
戦掟
消え去った運命?・・・・結構体験したりしてるな・・・・・
自分はその人に尽くしてやりたい。・・・・まぁ、結局は何も出来ないけど・・・
出来る事があるとしたら一つ。
悲しまない事だ。
たとえ、どんな力があったとしても。
ウィーク・トライブ ―WT―
二十一章「戦掟」
「おいおい・・・・・・・何だあの数・・・・・・」
窓から見渡す限り、敵の数は数十人。いや、違う。
数「百」人。だ。
「・・・・・・・っ」
敵を上から窺うと、ゼロは急いで部屋を飛び出す。
閉めずに飛び出たために空いたままの扉を、スザクも後を追うように駆け出した。
「お前等は安静にしとけ!何とかする!」
何とかも何も、無理なのでは。しかし、怪我をした自分達には何もする事が出来ない。
押さえきれぬ不安を何とか払い退けた。
その時この病院の副院長の少女。
とは言っても、レイド達と大して年は変わらない様に見えるが、
シルフが不意に口を開いた。
「・・・・・・あれは何?何か大勢いるけど・・・・・」
横目で窓の外を覗く。落ち着いている素振りを見せているが、実際焦っているという事が目に見えている。
「・・・・・・もう迷惑掛けてらんねぇから大丈夫」
起き上がろうとしたレイド。だが、痛みで起き上がる事が出来ない。
「・・・・大丈夫なわけ無いでしょ。普通でも一ヶ月はかかる怪我。二日で直るあんた等はどうにかしてるけど」
小さく溜息をついた。
まだ敵は病院まで近づいていない。
しかし、此処に来るのは時間の問題だ。
「・・・・・・・・あんたらの敵なんでしょ。その様子だと察しくらいはつくわね」
「・・・・・俺達を出せば此処は助かるかもしんねぇぞ」
わざと冷たく言い放った。と言うより、気力が無い。そんな感じだ。助かる見込みも少ないのだから、この病院だけでも助かったほうが良いのではないか。
「・・・・あんた等が原因かは分からないし、・・・怪我人は放って置けない。
・・・・・あの人の教えだから」
ゆっくりと立ち上がり、空いたままの扉を閉めなおしながらに言う。
勿論、二人はこの言葉がどうも気になった。
「・・・・・あの人?」
無意識に言ってしまったらしい。しかし、もう途中まで言ってしまい、仕方なく、と言う感じに続けた。
「・・・・・・この病院を建てた人。そして孤児だった私を拾ってくれた人。あの人がいなかったらもう死んでた」
意識が、無い。
いや、意識はあるが、意識がないと言う、妙な感覚だ。
今でも忘れられない。
まだ赤ん坊の時に森の中に捨てられ、もう自分の存在は消えてなくなったも同然だった。
その時何かの存在を感じた。影が自分を完全に包み込む。
「・・・・・・・・・・」
黙ったままその小さな命を拾い上げると、黙ったまま森の中を歩いていった。
―――――ルフ
良く聞こえない。しかし、何度も何かを言っている。
―――――シルフ。
それが、自分の名前だった。
物心ついた頃から、自分を拾ってくれた人物を、親の様な存在としていた。
医者として生きていた彼を、気づけば自分も医術を学ぶようになっていた。
毎回言われた言葉は、「何としても怪我人を見捨てない。例え、その人が誰であろうと、苦しみは皆同じなんだ」
尊敬に値する人物だった。何時か、この様な方になりたいと。
命を助けてもらって13年後。
殺された。
助けるはずの患者に。
何で殺されたかは分からない。でも、殺された。
血塗れの寝室。一つの死体。割れたガラス。
私は死体の前で泣きくじゃれた。
しかし、死を予知していたかのような遺言。
『この病院から離れてくれ』
何故この様な場所に病院を建てたのか、疑問に思わないことは無かった。
色んな事にも不便だ。盗賊もいる。
しかし、この病院を離れなかった。
自分でも離れなかった理由は分からない。
長い間この病院にいた執着心なのか、全く分からない。
でも、離れたくは無かった。
その時初めて、一つの事に気づく。
私を救った、医術を教えてくれた、彼の名前を、一度も聞いた事が無かった。
森の中で良く視界は見えない。
太陽の光もほとんど遮り、辺りを冷気が漂っている。
病院の大きさを改めて確かめた。
小さなマンションくらいはあるだろうか。
三階と屋上。レイド達は今三階にいる。
「おい、お前名前何つったか?」
「スザク、だ」
「んじゃあよスザク」
「この病院を数百人と戦いながら守れるか?」
スザクは苦笑いを浮かべる。
「へへ・・・・正直キツイな、それ」
槍を懐から抜き出した。
「・・・・・・・・奴ならどうしただろうな。通りすがりに俺達助けやがって。都合が良いにも程があるってんだ」
ゼロも刀を抜き出す。
「まぁ、その人物がどうだかは知らんが・・・それがどうした?」
奥から迫ってくる音が次第に大きくなる。
もう目の前だ。
槍を強く握り締め、スザクは一歩進み出た。
「やってやるさ。例え・・・・死のうがなんだろうが。やってみない事には分からねぇだろうよ」
その瞬間だ。木の狭間から10人程飛び出してきた。
先程までの冷機漂うこの場所は、人が集まり熱気と土埃が舞い上がる。
「・・・・遅ェよ」
一瞬にして剣を横に振る。それだけでも二人は斬った。
もう片方の剣は縦に振り、三人斬った。
スザクも負けじと槍を突き出す。
一人を攻撃した時、左側に隙が請じたが、瞬時に左足で蹴り飛ばした。
「へぇ・・・・やるじゃねぇかスザク。その調子でやれ」
「元々裏組織にいた身だ。そう簡単にやられはしねーよ」
敵はあくまで病院を狙っているらしい。病院の入り口に入り込もうとしている。
何とかそこに入れない様にするのが精一杯らしい。
「おっとぉ!!?」
敵の剣がスザクの腕を掠める。
一歩引き下がり、そしてまた槍を突き出した。
「ちっくしょうが・・・・時間の問題だな・・・・・」
最初に10人が来た後、続けざまに次々と敵が現われる。
次第に列を作るような状態となっていた。
「この数は何処から沸いてきやがる!?何処から来やがった!!」
ゼロは怒りと共に疑問を吐き出す。
その時だった。
「こいつら・・・・・・・・人じゃない・・・!?」
先程から戦う限り、イント、ベルラス、ヒュペルネス、ザルスなど種族は様々だった。
しかし、どれも皆・・・・・人という気配がしない。
・・・見た目は何の疑いもなくなるような「人」なのだが。
「ぐッ!!?」
ゼロが肩を引き裂かれた。
傷口から血が空中に跳ね上がる。
その時でさえも敵は無造作に襲い掛かってきていた。
この者達には全くの「恐怖」が無い。いや・・・・「感情」が無く感じられた。
「ゼロ・・・・! こいつら狂ってやがる・・・・」
ただただ剣を振りながらスザクに突撃してきた。
まるで、機械の様に。
スザクはその敵も槍を突いた。
「・・・・・・!!」
剣で突いたにもかかわらず、敵はスザクに命を捨てるかのように。この一撃のために生まれたかの様に。
命を捨ててまでスザクを斬った。
肩から縦に振り下ろされた攻撃は、浅いとは言えども致命傷だった。
血を体からあふれ出させながら、その場に倒れる。
そしてゼロも又、斬られたスザクに反応してしまい、その隙に腹を脇腹を引き裂かれた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・体に 力が入らねぇ。
目の前が 血で真っ赤だ。
まだ、奴を見つけてさえいない。
全て 無駄だったのか。
『哀れなもんだな。ゼロ』
・・・・・・・・? ・・・・何処からか声がする。
『俺が憎いんじゃなかったか?ここで死ぬのか。へぇ、いい様だな』
テメェは・・・・・・・・
『死にたければ勝手に』・・・死ぬかよ。
・・・・・・・・意地でも生きてやる。
テメェを殺すまでな。
「・・・・・・・・・・・・・・!!」
ゼロは我に返る。先程の感覚が無くなった。
何だったんだ。
右を見る。・・・スザクが倒れている。
前・・・・・そうか、俺は戦っていた。この数を相手に。
普通に考えたら勝てるはずがない。
いや、
勝つ。
その瞬間ゼロの傷が癒え出した。
その時も尚、敵は襲ってくる。
・・・種族はダクバスだ。ゼロよりも体格が大きい。
軽く受け止めた。
そして、斬る。
そして、ゼロには不意に言葉が浮かびだした。
「・・・・・『ペントミノ』」
何だ。この感覚は、力が漲って来る。
前にも一度だけ、あった感覚だ。
奴との戦いの時にな。
二本の刀で瞬く間に敵を斬る。一人、二人、三人、四人。
常人では目で追うことさえ困難なのではないか。
もう目の前に並ぶようにいた30人は切り裂いた。
もう、誰も来ない。
・・・・・勝った。
そう心の中で悟ると、力なくその場に倒れた
心配。というレベルではない。
病院から下される視線は、寝室にいたレイド、ルバス、シルフ。
「早く治療しなきゃ・・・・」
部屋ら飛び出すシルフを、心配そうに見送る。
「ったく・・・・死にかけやがって・・・・」
まだ生きてるとは思うものの、命が危ない事は確かだ。
しかし、先程は息が詰まりそうな程心配だった
それと比べれば楽な状態だ。
外も中も急激に静まり、まさに無音。空中を漂う風の音だけが音を鳴らしていた。
湿度も下がり、ひんやりと冷たい空気を素で感じられる。
その沈黙が一気に掻き消された。
「・・・・・・・な・・・・まだ・・・!?」
敵が「まだ」いた。いや、そんなはずは無い。
・・・・・・新しく、作り出された・・・・・・・?
まだ、出てくる。何処からか、沸いてくるようだ。
「・・・!!おい!!!目ェ覚ませ!!」
痛む傷口を押さえながら精一杯に叫ぶ。
そして、敵の刃はゼロとスザクに向けられる。
振り下ろされた。
バチィッ!!
辺りに大きく火花が散る。
長いコード。順にそのコードを辿ると、一つの手だ。
帯電グローブを付けた、セィだった。
バチバチと言う火花の飛び出る音を出しながら、
電気コードをしねらせ地面に叩きつける。
「そいつらに手を出すな」
一瞬セィの攻撃に反応したが、全くの躊躇いも無しに襲ってきた。
軽く横に振ると、火花と共に敵を吹き飛ばす。
吹き飛んだ敵は木に激突する。
そしてもう一人いた種族がベルラスの敵は、恐怖を抱く様子すらなく無造作に襲い掛かる。
ただただ猛突進な攻撃は避わされ、
突如後ろから現われた影が敵を棒で殴り飛ばした。
・・・ギルだ。後ろにも何人かいる。
その直後に病院からシルフが現われた。
この状況に動揺は隠せない様だが、
医者の本能か、すぐさま倒れているスザクとゼロを動かした。
後から、グラヴィズに捕まっていたギル達を看病していた医者達も手伝っている。
セィは誰も見当たらない、森の中に向けていった。
「・・・いるんだろう?ザイン」
視線の先、丁度その場所から何者かが現われた。
緑色の髪。白い目。セィよりも年は高く、三十歳以上はある。
木の葉を繋ぎ合わせて作られた服を着ていて、片目は・・・・無い。
・・・・・・・ギルだ。
「久しぶりだな・・・・・ザイン」
「ふん・・・・掟を破った恥さらしめが」
じりじりと息が詰まるような雰囲気が漂う。
セィとこの人物は知り合いらしい。この時には既に、シルフは二人を連れ病院の中に入った。
セィは合図無く謎の人物にコードを振り下ろす。
容易く避け、隠し持っていたナイフを突き出した。
血が噴き出る。
しかし、その血はセィの手元からだ。
長くリーチが長い代わりに攻撃後の隙が大きく、丁度その瞬間に攻撃を行なったが、
空いていた左手でナイフの刃を受け止めている。
「フン・・・・そうまでせねば攻撃を止められぬなら・・・・まだまだだな・・・・」
この人物も帯電グローブを持っていたらしい。セィの武器を予測していたのか。
セィのコードを引っ掴み放り投げた。
「これで貴様も終『こちらが一人だと思うな』
後ろにいた数人のギルがこの人物に攻撃を放つ。
すぐに察知したのか、間一髪避られた。
「数が多いな・・・・此処は一旦退く。・・・・待っていろ」
「待・・・・・・・」
その瞬間既に誰もいなかった。
残ったのは、ただ、敵の残骸だけだった。
『失った物、は有る』
『得た物は、何も無い』
「・・・病態は?」
「全然平気。最初に会ったあんた達と比べれば大した事無いし」
これ見よがしにカルテを見せ付ける。
・・・やはりおぞましい。
しかし、自分達と比べれば大した事は無い。らしい。
再度静まった寝室。レイドとルバスは気が一気に楽になった。
時間は・・・・・夕暮れ時だ。その太陽の前を、鳴きながら飛んでいる鳥が数羽。
温度も肌寒く成り掛けており、二人は布団を被ろうとする。早く体を直さねば。と言う思いに自然に体が動く。
だが、妙なものが見えた。
先程から何度も見かけた鳥よりも異様に大きい。いや、鳥の形とは別の物だ。
遠くに飛んでいるからか、夕日に当たり出来る影しか分からない。
体が疲れているのだろう。そう考え、急いで布団に潜り込んだ。
「あ、そういやどれ位でその二人の怪我治る?」
そのレイドの問いに、シルフはカルテをもう一度見直す。
「・・・・・・ええと、スザクって人は一ヶ月は時間が掛る」
「一ヶ月!!?」
一ヶ月、と言う言葉に、驚きを隠さずに言った。
「あんた達二人はあの変な球も使ったし、とにかくスザクって人は普通なの。あんた達が異常に直りが早いだけ。
・・・ゼロは二日で直る。直り方があんた等と似てるわね」
直り方が似ている・・・・・・?
体の体質が同じなのか、それとも・・・・
『ペントミノ』。ゼロも先程呟いていた。
自分もグラヴィズの時に思った事を覚えている。
それが関係しているのだろうか。
難しい考えはやめ、すぐにでも動けるようになる為にそのまま目を閉じた。
先程飛んでいたのは、カービィ族だった気がした。
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