ウィーク・トライブ

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消え去った運命なんて。知った事じゃねぇ。
そんなに知りたければ、知ればいい。ただそれだけだ。
力に見据えて縋り付く様な事は絶対にしない。
それが、あいつとの約束だから。





ウィーク・トライブ −WT− 


二十章 「0」





「病院・・・なのか?」
その言葉を言った後に、小声でスザクに言う。
「・・・・俺達カービィ族だってバレてるよな?」
その時白衣を着た少女が割り込んで言ってきた。
「とっくに知ってる。嫌ってたら看病するわけないでしょ」

抱えていた書類を机の上に置くと、何かを書きとめている。
「何族でしょうが何でしょうが医者は医者の務めを行なうのがこっちのやり方。法律には囚われてないだけ」
書類を一つに纏めると、忙しそうに部屋から出て行った。
「・・・・誰?」
レイドがまた、小声で言う。と言うより、
痛みで体に力が入り難いのかもしれないが。

「ここの副院長。随分若みたいだが、天才らしい」
すぐに受け答えしたのはスザク。
直後にいつの間にか復活していたセィが続けた。

「ここは・・・・・僕等が昔来た場所でね。土地の広さも狭く、人が住む事は出来ない場所だ。
でも、何かしらの理由で病院を建てたとか・・・・」
説明を打ち切ると、スッと立ち上がった。
レイドが声を掛けようとした時、スザクが言う。
「お前、あまりにも血ィ流しすぎて、死ぬとこだったんだぞ。何か緊急手術やら血液足りないやら・・・・・色々な。まぁ病院が近くにある場所で良かった」
そしてセィが冷えた取っ手を掴むと、手首を捻らせ扉を開けた。

「まぁ、とりあえず安静にしておけ」
その言葉を言い切った直後に扉を閉める。ガチャ、と言う音が微かに響いた。

スザクは一息安心したように息を吹くと、また話を始める。
「お前等相当の傷だったろ?」

あの傷は相当の物だった。グラヴィズの槍はレイドの体を突き抜ける程だった。
それも5時間もその状態だったと聞いている。
どう言う事なのだろうか――
レイドがそう思っている時に、スザクは言う。

「あいつが持ってた光る玉使わせてもらった」
そう言うと、前は光っていたはずなのだが、全く光の篭っていない玉があった。
光の失せた球はただの玉と化し、しかし、それが少し不気味にも感じる。
「これ・・・・・使ったのか?」

レイドが申し訳なさそうに言う。スザクはあっさりと即答した。
「ああ、セィがこの玉持ったら手の傷が消えたから使ってみたらしい」

確かに、そのお陰で助かった。しかし、スザクは知らない。
レイドは先程から沈黙しているルバスと見合わせる。
あれは・・・・人の生命を使っていると言う事を。
スザクは少し焦ったように言う。

「ほらほら。助かったんだからそんな顔すんな。どしたんだ?俺はそんな暗い空気苦手だって・・・」
そして逃げるように背を向けると、玉をひょいと持ち上げる。

「にしても何だろうなこりゃ。何か・・・・・ちょいと気持ち悪い・・・・」

その玉から目を逸らし、丁重に置いた。
そしてゆっくりと立ち上がる。
「俺、ちょっくら散歩出かけるから、ここで安静にしてろや」

ふらふらとだるそうに部屋から消えていった。
レイドは怪我の状態を確かめる。腹を貫通した傷は・・・痛くて動けない。だが、血が吹き出すなどはしていないと言う事は、一応塞がれてはいるのだろうか。
ルバスにそっと声を掛ける。
「お前・・・どれくらい傷深いか解るか?」
少し間を置いて返答した。
「んー・・・・・足が随分痛いのと・・・・体中が軋むって感じかな」
「・・・そっか」
チラリと窓を覗く。森だ。

「森・・・ここはどこら辺にあるんだ?グラヴィズの奴等は・・・・」
最近は良く分からないことが多すぎる。
何故此処はカービィを受け入れたやら、何で父さんがあんなとこにいたやら・・・・
ここにいて軍の奴らが来ないやら・・・セィが何故まだ此処にいるやら・・・・・

整理してもしきれない。
そんな事を考えている時、今此処の寝室に扉がバタンと大きな音を響かせた。

セィだった。慌てた様子で口を開く。
「・・・・・・敵だ!」
敵!?一瞬戸惑う。しかし考える間も無く次の言葉が発せられた。
「可笑しなことに・・・敵が軍じゃない」

その頃病院の入り口では、十数人かが一人の男を前に止まっている。
「ただの調査だ!何もお前等を駆除しに来た訳ではないだろう!?」
しかし男は一歩も譲らない。それどころか威勢よく言い放つ。
「五月蝿ぇ!こっちは病院だ!お前等みたいな奴等が来たら病体に響くんだよ!それとお前等どう見ても軍じゃねぇ!一体何者だコラ!!」

その言葉に腹が立ったように剣を抜いた。
「だったら・・・・無理矢理通させてもらうか・・・・・・」
剣を抜く。そして構えた。
「・・・・上等ォ!!」
まったく怯まずに持っていた剣を二本抜く。
その行動に同様が隠せなかったらしい。気迫も凄く、一歩引き下がった。
「・・・・・・・・・この数を見て怯まんとは・・・・馬鹿な奴だな・・・・・・」

「馬鹿はどっちだ?」
一人が腹を立て飛びかかる。しかし軽々と弾かれ、その瞬間に斬った。

「なっ!?」
敵が驚いた瞬間にまた二人、三人と引き裂く。
そして敵が剣を振りかざした瞬間にはもう全員倒れていた。

「ったく何だこいつ等は・・・・・」
その場に後ろから一人来る。
「ゼロ。終った?」

「あ〜。終った。にしてもこいつ等何者だ?」
2本の刀をしまうと、鋭い目で倒れている敵を睨みつけた。



二階の窓から顔を覗かせていたレイドが少し驚いた様な目で見ている。
意味もなく驚きを声に出し、「・・・うわ〜・・・」などと呟いていた。

「誰?あれ」

その言葉に少し困ったようにセィが言う。

「良く分からないが・・・まぁ、良かった」
レイドは納得しないまま、セィは続けた。
「・・・・外に出かけてくる」
先程から一体何をしているのか、そう疑問を持ったが、言葉には出さなかった。
セィが部屋を出て行った直後、行き違いにまた扉を開く音がした。
一斉に振り向くと、その音の主はスザク。

「おう。見てたか?あれ」
半分呆然としている一同をそっち除けに、
へらへらした軽い様子で話を続ける。
「ゼロ。だとさ。ここの門番と言うか・・・・・・・」

イライラしているゼロを窓から見下ろすと、
今度は少し真面目に言った。
「本題は・・・・・あいつらは「グノーシス」だ。あの服装は見覚えある。厄介な事に此処まで嗅ぎ付けて来やがったらしい」

スザクは小さく舌打ちする。
その時ルバスが話を切り出した。
「怪我は・・・後どれ程で治る?」
グノーシスに狙われているのなら尚更だ。
早くしなければ、自分どころか他人まで影響を及ぼしてしまう。
これ以上被害は出したくない。それで頭が一杯だった。

「驚く事にな・・・お前等の傷の直りが驚くほど早いらしくてな。後二日程で直るらしい」
「二日・・・・・・!?」
あのグラヴヴィズが持っていた傷を治癒する球を使ったとしても、自分の体はまだ痛い。立てない程に。
それが、たった二日で直る。あまり信じられる事ではなかった。
もう一度傷に触れてみる。・・・・やはり痛い。
「後二日・・・ねぇ」

予想以上に早いが、二日は大きい。
何時、グノーシスに襲われるか、不安で押し潰されそうだった。

「大丈夫だ。何事もなく終わるさ」
「・・・・!」
少し笑みを浮かべている。
スザクにこんな優しい言葉を掛けられたのは初めてだった。

不安が飛び、・・・・随分楽だ。

バァン!!!

暖かい空気が部屋を包んだ瞬間、
またもや扉を思い切り開く音が聞こえた。
「おう!邪魔するぞ!」

おう。じゃない。こちとら病態だ。
と言いたいが、急過ぎて対応が出来なかった。

刀が三本、レイド達よりはやや体格は大きく、グラヴィズ並に目が鋭い。
茶色の髪、白いコート。そして目で確認できる顔と手は、傷だらけだ。
・・・先ほどグノーシスと戦っていた「ゼロ」と言う人物らしい。
何か言う前に、先にゼロに言われた。
「お前等・・・・・先程の奴らについて何か知ってるか?」
「・・・・・・・・・・」

ここで、「あいつらは俺達の敵だ」と言ったらどうなるか。
自分達が狙われる。と言って、ここから放り投げ出されるに違いない。
「お前等カービィ族らしいしな・・・・あいつらが誰だと聞いているんだ」

止まらぬ質問。
言うべきなのか分からない。しかし、口を震わせながら言ってしまった。
「敵・・・・・・・・・だ」

・・・沈黙。

これほど怖いものはない。

次に何が言われるか。その恐怖などがもろに体感させられる瞬間だからだ。
唾をゴクリと飲む。心臓の音さえも大きく聞こえてくる。
スザクも同じくだ。
ゼロが口を開ける。しかしこちらからは、スローモーションの様だ。
瞬き一つも遅い。

そして、

言った。
「協力してやろうじゃねぇか」

・・・は?
意味が分からなかった。
急に病院に入れさせてもらって、そして協力してくれるだと?都合が良いにも程がある。

「お前等、あいつらに命狙われてんだろ?俺はあいつらが好かねぇ。喜べ」

唐突過ぎる。いや、しかし助かった。
とにかくは、このまま病院に置いてくれるらしい。
そして、協力してくれるらしい。
・・・・ありがとう。
心の中で呟いた。



暗い、森の中。

一人、二人・・・10人。結構な数で、皆ギルらしい。セィもいる。
「奴だ・・・」
額に滲む汗を振り払うと、緑の眼光を的に向ける。
見つめる先は、一人の人物。


「くそ・・・・何で奴が此処に・・・・!?」

その人物は何やら可笑しな模様が描かれた手袋を付けている。

その手を、目の前にあった木にかざす。

何かを吸収するような音。

そして・・・
木が枯れた。

「やはり・・・・あいつか・・・・・」

一人のギルが飛び出す。
しかし、セィは引き止める。

「ピット!早まるな。今は様子を窺う」
手を引っ張り引き戻すと、ピットと呼ばれた人物の肩を掴んだ。

「ですが・・・・・・」
「今、奴に見つかったらこっちの命が危ない・・・・。それは分かるだろう?」
セィは宥めると、肩を離した。
そして背を向ける。
「・・・・・何処に行くんですか?」
「・・・・・一旦病院に戻る。気をつけて見張っていてくれ」




「・・・・俺は此処で拾われた」

その声はゼロだった。
先程の鋭い眼光から一変し、いや、鋭いが。
少し優しさ、と言う物がやや感じられる声で言った。

「その恩があるから、ここで番人やってるだけだ」

ゼロは、何故かは知らないが旅の途中、ここで行き倒れたと言う。
この場所はよく盗賊などが住み着いているらしく、ここを襲いに来るらしい。
そこで困っていた時に助かり、その恩で此処で盗賊を始末しているとの事。
ここの院長は、また旅に行きたければ行けば言い。と言っているものの、自分自らここで番人を勤めているらしい。

「俺にとっては此処の人達は命の恩人だ。それぐらいの恩は返さなにゃらねぇ」

ガチャ

扉がまた開く。
出入りが激しいな。と思いつつ目を向けると、
セィが行っていた此処の副院長の少女だった。

「おう。シルク」

「おう、じゃないでしょ」
先程レイドが心底で呟いた言葉を、
そのままそっくり返したような即答だった。

「えーと確か足骨折脈切断あと・・・・・・」

レイドとルバスの二人は心底驚いた。

次々と自分の状態が口に出され、生きているのが不思議だ。と言う気分だ。
しかし現在は命に関わる事では無いらしい。と言うか何故わざわざ言ったのか。

・・・嫌がらせか?

ゼロに「シルク」と呼ばれた少女はカルテを手に取る。
そして何かを書き出した。恐らく病状なのだろうか・・・・。

レイドはふと一つの質問を思い出す。

「此処は何処?」

前々から気になっていた事だ。外を覗けば森。そして何故かセィが場所を知っている。
セィが此処に来たことがあると言っても・・・・不に落ちない。

「・・・・・・・・森の中」
そりゃそうだけど。とすぐに返したが、その直後「なんであんたなんかに詳しく教えなきゃならんのよ。」
と即答されたた。
しかし、会ったばかりの他人にそう易々と情報を教える訳がないか。
何か問題がある気もする。

「ん・・・・・・・・・・?」

何か、音がする。
まるで、何かがこちらへ接近している様な。だんだん音が大きくなる。

外を覗く。何もいない。木で下が見えないが、気配は無い。気のせいかと思いつつ顔を引っ込めると、
また、音が聞こえた。さっきよりも近い。
「一体なんなん・・・・・」
もう一度顔を覗かせると、数十人の敵が押し寄せていた。
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