ウィーク・トライブ
目覚めるまで
知らない者は誰一人いない。そんな有名な・・・・・昔話ってほどでもないが、少しばかり昔の言葉。
「廃羅、この地に紅き漆黒に滅さん」
こんな言葉。
「はいら、このちにあかきしっこくにめっさん」
一人の5歳程度の子供が呟く。
赤い皮膚と赤い目を持った子供だ。
隣にもう一人。同じくいた。
そして、その前に座っていた一人の男性、恐らく親であろう。
「ねぇねぇお父さん。これってどういういみ?」
その問いに困った表情をしながら、ゆっくりと答える。
「レイド。ルバス。お前達にはまだ早い。あまり考えなくていいんだよ」
笑みを浮かべながら煽てるように言う。そして腰を上げ立つ。
何処に行くのか。と思いながら二人は親の背中を見ている。そのまま道を曲がり、姿を消した。
それから帰ってくることは無か・・・・
「二人とも」「何故だ」
「残念に思「のくせに「クズが」
「どうして待ってくれなかったの」
「じゃあ消えればいいのに」「不快だ」
「お前等にはがっか「そこまでは」
「消えろ」「目障り」「お前は」
「材料だ」
「・・・・・・・・!!」
白。目に映るのは白い壁。そして・・・・ベッド?
辺りを見回す。右側にカーテンが掛っており、上は傾蛍光が光っている。結構明るい。
左側には・・・・ルバスだ。同じくベッドで寝ている。
「お、元気になったか?粘土」
何者かがカーテンの隙間からそっと顔を出す。
「!」
は?粘土?俺?俺の名前・・・レイド。ああ、俺は・・・・俺か。
こいつは・・・セィか。
「お前・・・粘土って何?」
当たり前のツッコミを入れる。何が?とばかりに首を傾げた。
「お前の名「ああそうか」
棒読みで言って見た。こいつ恐らく「お前の名前」って言ったに違いない。
こいつ勘違いしてるのかもう分からん。とりあえず無視する事にした。
「あ・・・そっか「レイド」だったか。ほら、安静にした方が良い。君は大怪我負ってるんだからね」
一文字しか合ってない。と言うツッコミをする気も失せた。しかし、確かに安静にしてなければならない事には変わりないだろう。
体の痛みを堪え、ゆっくりと体を横にする。
「ちょっと薬持ってくるから待ってて」
しかしレイドは完全に上の空だった。
さっきの夢が頭から離れない。・・・・父さんがいた。・・・・・
「お前は材料だ」・・・・・・・・・・この言葉は一体・・・・・・。
「はいはい薬持ってきたよ〜」
しかしレイドは全く聞こえていない。
「・・・・はいジャバーン」
その時に大絶叫が辺りを包んだ。
「・・・・・・・が・・・あがが・・・・」
レイドはセィに大量の消毒液を掛けられ、瀕死状態に陥っている。
その声でルバスが目を覚ます。そしてスザクと、知らぬ顔の白衣を着た小女が一人来た。
幾人者の声が重なる。
『・・・・・・どしたの?』
セィが何事も無かったかの様な顔で言った。
「いや・・・・何ていうか・・・・消毒液掛けてあげたんですけど」
悲鳴、再び。
「大丈夫・・・・・か?」
スザクは驚き混じりに言った。その声に恐怖さえ聞こえる。
「何・・・・・・・・・・・とか」
消毒液で濡れたベッドをテキパキと取り替えると、その上にレイドを再度乗せてくれた。
とにかく、今この状況を理解する事に専念する事にした。
「ここは・・・・・・何処だ?」
「病院」
慌しく飛び交う会話。これは今の5時間ほど前の出来事だった。
東方司令部「ホライロウ」軍内部。
「皆!早くしてくれ!流石に軍の奴等が来てしまえば終りだ!そこの五人はこの二人を連れて行ってくれ。スザクはいるか!?」
「はい!います!三人確認しました!」
気を失っているレイドとルバスはぐったりとし、5人に抱えられている。
スザクは・・・・・寝ているようだ。しかし、自主的に「眠いから寝た」と言う感じがしてならなかった。
「皆!こっちだ!」
セィは一つの道を指差す。前に入ってきた道だ。
大き目の扉。レイドとルバスが無理矢理連れてこられた場所と同一だ。
焦った様子で扉を開けると、ギルが次々と中に突っ込んで行く。
それでもドミノ倒しの様にならないのは、この扉の広さだけでなく、息ピッタリのチームワークもある。
先頭にいるセィが全員来ている事を確認すると階段を上り、地下から出る。とその前に、先程の場所は薄暗い地下だ。
特に「中心」となる部分は無いらしく、勘を頼りに細い廊下をを走り抜ける。
そして扉を抜けた瞬間、気付く。外はいつの間にか暗く、夜だったのだ。
グラヴィズや軍人が潜んでいる可能性を気にしつつも、隊列を作って歩く。
出来るだけ遠へ行くように命令したのだから、すぐには帰ってこないはず。そう思っていた。
セィ達の死角で、倒れている軍人が・・・・・・・・何十人かいる。
一つに命令したからと言って全員が全員行くことは無い事を、セィは知らなかった。そんな軍に対する知識は得ていないのだから。
しかし、セィ達の前に現われる事なく、軍人は幾人者倒れている。
その中心に立っているのは、一人のカービィ族。狂ったように唸り声を上げ、苦しんでるようにも見えた。
特異な羽がメキメキと音を立てている。
苦しみが治まると、息を切らしながら飛び去っていった。
一行は長い間・・・・・・3〜4時間程歩く。既にレイド達には応急処置が施され、命には別状は無いらしい。
そして一つの場所に辿り着く。一つの病院だ。流石に全員行く訳にも行かないので、
怪我した者達と、その怪我人を運ぶ人だけが入った。
「間に合ってくれよ・・・・・」
ぼそりと呟く。血を5時間も流しているのだから、死ぬ可能性は高い。
そして、病院の中に入った。
「病院・・・なのか?」
その言葉を言った後に、小声でスザクに言う。
「・・・・俺達カービィ族だってバレてるよな?」
その時白衣を着た少女が割り込んで言ってきた。
「とっくに知ってる。嫌ってたら看病するわけないでしょ」
抱えていた書類を机の上に置くと、何かを書きとめている。
「何族でしょうが何でしょうが医者は医者の務めを行なうのがこっちのやり方。法律には囚われてないだけ」
書類を一つに纏めると、忙しそうに部屋から出て行った。
「・・・・誰?」
レイドが密やかに言う。
「ここの副院長。随分若みたいだが、天才らしい」
すぐに受け答えしたのはスザク。いつの間にか復活していたセィが続けた。
「ここは・・・・・僕等が昔来た場所でね。土地の広さも狭く、人が住む事は出来ない場所だ。でも、何かしらの理由で病院を建てたとか・・・・」
説明を打ち切ると、スッと立ち上がった。
レイドが声を掛けようとした時、スザクが言う。
「お前、あまりにも血ィ流しすぎて、死ぬとこだったんだぞ。何か緊急手術やら血液足りないやら・・・・・色々な。まぁ病院が近くにある場所で良かった」
そしてセィが冷えた取っ手を掴むと、手首を捻らせ扉を開ける。
「まぁ、とりあえず安静にしておけ」
その言葉を言い切った直後に扉を閉める。ガチャ、と言う音が微かに響かせた。
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