ウィーク・トライブ
策略
ふと顔を見上げる。そこには、緑色で、相手の心を見透かすような目。
少し汚れた、毛皮で作られたような服に、電気を弾き返すような軍手。と言うより手袋だろうか。
「セィ・・・・・・・・・・・?」
その声に反応し、緑の目がこちらをちらりと見る。しかし、今にも飛び掛りそうなグラヴィズから目を離すことはない。
バチバチを音を鳴らしながら唸るコードの音と共に、小さく囁く様に言った。
「とにかくここから逃げる・・・・・。もうじき軍の奴等がここに来るだろう」
とは言うものの此処は「軍」そのもの。何故かは知らないが、この無駄に広い部屋には、この場にいる四人以外には誰一人も来ていない。
しかし、先程のレイドとルバスの攻撃の音で、この場所に来る可能性が高い。
そうして今の状況を把握していると、グラヴィズがゆらりと動き出す。
「セィ。と言ったか。貴様何処から此処に・・・・・」
その問いに、少し笑みを浮かべながら即答した。
「『突撃』ならばどうする?」
「!?」
意味が分からない様な顔をし、鋭い目がギロリと睨む。
意識が薄れ行くレイドとルバスまでもが動揺した。
「・・・・・嘘を言え。軍に大した数の無い集団が、一つの軍司令部に勝てるとでも言うのか?」
その時急にセィは吹き出す。侮辱されたような笑い方にグラヴィズは怒りそうになったが、それを堪え、余裕の表情を浮かべた。
「・・・・・何だ?何がおかしい?」
まさか、こんな言葉が発せられるとは思いもしなかっただろう。
「此処、当方司令部に、軍人はただ一人存在しない」
種族『ギル』は元々、自然でしか住むことの出来ない体質。
工場から発せられる煙などが苦手で、町に住むなどもっての他だ。
例え普通に住める場所があったとしても、その街はギルを完全に嫌っている。
嫌っていると言ってもカービィ族の様な嫌い方ではなく、ギル自体の「掟」と言う物がある。
『我等が「ギル」以外と接する事を禁じる』
この一言だった。
掟を破ったものはギルから迫害され、一人寂しく生きていくか、そのままのたれ死ぬか。
「ギル」と言う種族そのものが社会の様な物なのだ。
激しすぎる上下関係。これだけが全てを握る。
――そして、消え行く自然の中で、豊かに生活できるのは偉い者達だけだった。
そして、また一人、生活に耐えられなくなり、掟を破り迫害されたもの達がいた。
「食べ物・・・・・水・・・・・・・」
誰がどう見ても、まさしく「荒地」と言う場所。戦火が蠢いた戦いの軌跡に、放り投げだされた一人のギル。
「・・・・・・・・・・・」
遂に、飢えに耐えられなくなり倒れた。意識が薄くなる。頭が痛い。これ以上は・・・・・・
その時、一つの影がある。顔を上に向けたいが、力が入らない。見えるのは顔から下だけだ。
スッと手を差し伸べてくれたのが分かる。渾身の限り力を振り絞り、暖かい手を掴んだ。
「大丈夫か?」
少し冷たい感じの声に秘められている優しい感情が分かる。そして後から何人も来たが、その時意識が消えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
ハッと目を覚ますと、周りに何人もギルがいた。一人。二人・・・・・10人近くいる。
「腹が減っているだろ?ほら食べたらどうだ」
久しぶりに見る飯を前に、一瞬にして食べ物を掴み、口の中に入れる。
「まぁそう慌てるな」
思い出すと、ゆっくりと手を差し伸べてくれた、あの声と同じだと言う事に気付く。
置いてあった水を一気飲みすると、一息ついてから一言言った。
「・・・・・・あんたは・・・・?」
微笑みながら言った。
「セィ。君と同じ迫害された者達だよ。君の周りにいるのも皆。ね」
セィはただ一人、地位が偉いにもかかわらず、掟を破った。
最も地位の少ない小数の者達を引き連れ、共に掟を破り逃げたと言う。
そして、行く様々でギルの情報を取っては、迫害された者達を集め回っていた。
それと同時に、住処を探していた。
そして事件は起きる。
皆が各地を回っている時に偶然付いた町『サギノド』
とにかくどの様な町か確かめるべく、町を探索する事にした。
「・・・・・どこからどう見ても「都会」すぎるな・・・・ここはやめにするか・・・・」
周りが森だったにもかかわらず、中は一変していたので肩透かしだった。
その時
「キャアアアアアアアアアア!!」
急に悲鳴が鳴り響く。店からだ。
ギル達はそこに駆け寄った時、思いもよらぬ言葉を耳にした。
「こいつらだ!こいつらが店の物を奪いやがった!!」
一瞬何のことか分からなかった。しかしその時、軍人が何人も駆け寄る。
「捕まえろ!」
その時には次々と軍人が現われる。本能が無意識に命じた「逃げろ」と――
何人かが縛り上げられ、捕まっていく姿を見て、逃げるのには悔いも感じた。しかし、今は何も出来ない。
ただ逃げる。捕まらないようにと。何時か助けると心に命じて――
「軍内部に人が一人もいない?どういう事だ?」
あざ笑うかのように見下すグラヴィズ。しかし、セィは続ける。
「簡単な事だ」
そして、言い放った。
「偽の命令を下した」
・・・その時表情が一変する。
「まさか・・・・・・・」
グラヴィズは一つの事を想像した。否定する間も無く言われる。
「・・・『緊急任務。カービィと思われる種族を発見』・・・・これを言っただけだ。その途端に一気に指名した場所に向かったさ」
「なら・・・・どうやって入った?」
「言ったろう?「突撃」したと。まぁ、下からではなく、壁をロープよじ登り、最初から中に入ったがな。中にいる少数の軍人は、数で圧倒したまでだ。そして、外にいた民は、今日、何かイベントの様な物があったな・・・・まぁ名前はあまり覚えてないが、その時に行った。多少いても、勝手に逃げてくれるしな」
その時レイドとルバスは意識が無い様子だ。それとは裏腹に悔しそうに槍を握り締めている。
「もういい・・・・・・・・だがな。貴様など・・・」
「貴様「等」だろう?」
後ろで扉が音を立て開く。
暗く静まった部屋に騒音が鳴り響いた。
「軍人ではなく・・・・・ギルだったな」
中に入ったギルは、半数が別の場所へと移動しようとる。・・・・・・地下牢だ。
「な・・・・・・廃羅の生贄をぉぉ!!!」
槍を振りかざし、ギル目掛けて突き伸ばした。
しかし怒りに身を任せた攻撃は容易くセィに止められる。
先程のようにコードを巻きつかせていた。
「誰が攻撃を許したか?」
電撃が伝わり感電する、しかし、怯まずセィに槍を伸ばした。
「・・・・・・・・・!」
避けると共にコードが解ける。しかし、グラヴィズの手には焼けたような跡が残っていた。
「ここは・・・・・・・・」
何が言いたいのかセィは分からない。そして、ギル達がこの部屋から消え、地下牢に向っていた。
そして、続けて口を開いた。
「引かさせて貰う・・・!」
「な・・・・・・」
つまりは「逃げる」と言う事だ。反論する間も無く、槍を地面に突き伸ばして扉の前に立った。
「ギルならくれてやる・・・・・・後悔するがいいさ。自分の犯した過ちを・・・・・・」
無線を取り出す。
「全員に命ずる!直ちに軍に戻れ!その命令は罠だ!」
「しまっ・・・・・・・・」
慌ててグラヴィズを止めようとする。しかし既に遅かった。
ガコ・・・・・・・・・・・・・ン
扉の閉まる音。それと共に開く音が聞こえた。ギル達だ。
「セィさ・・・」
セィの名前を呼ぼうとした時、その前にセィが叫んだ。
「急げ!軍の奴等が来る!それとこの二人も連れて行ってやれ!」
レイドとルバスを指差す。
大半は意識の殆ど無い捕まっていたギルを抱えてはいるが、手の空いている者もおり、グラヴィズの事や聞きたいことがある様に戸惑っていた。
「早くしろ!全員捕まるぞ!」
その声に、命令を聞くロボットの様にすぐさま命令に従った。
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